放射温度計の選び方|選定ポイントの詳細解説
放射温度計は、用途や環境によって必要な性能や仕様が異なります。適切な機種を選定することで、正確な測定が可能になり、作業効率の向上にもつながります。本記事では5つの項目に分けて、放射温度計を選ぶ際に考慮すべき重要なポイントを詳しく解説します。
1. 測定材料|対象物の材質に応じた選定
放射温度計は、対象物の放射率(Emissivity)を基に温度を計測します。
放射率は材質によって大きく異なるため測定材料に適した機種を選ぶことが重要です。
金属材料の場合 金属は反射率が高く、放射率が低いため、測定の難易度が高い傾向にあります。特に鏡面仕上げの金属は正確な測定が難しいため、波長選定が重要です。短波長域(2~5μm)のモデルが推奨されます。
非金属材料の場合 非金属(ゴム、プラスチック、セラミックスなど)は放射率が比較的高く安定しているため、測定しやすい傾向にあります。長波長域(8~14μm)のモデルが適しています。
特殊な材料 ガラスや液体などは専用の放射温度計が必要な場合があります。用途に合わせた機種を選ぶことが求められます。
2. 測定距離|距離と焦点設定の違い
放射温度計の測定は、測定対象物(測定点)の大きさに対して放射温度計の距離
(測定径)に影響を受けます。機器を設置できる場所に制約がある場合などは測定まで
の距離と測定点の大きさに応じた機器選定の必要があります。
距離対測定点(D:S比) 放射温度計のD:S比(Distance to Spot Ratio)は、測定距離と測定点の大きさの比率を示します。D:S比が大きいほど、遠くから小さな測定点を測ることが可能です。たとえば、D:S比が50:1のモデルは、50m離れた場所で1mのスポットを測定できます。
用途別の選定
近距離測定:製造ラインなどで近くから精密に測定する場合は、焦点の小さいモデルが適しています。
遠距離測定:高所や危険な場所では、長距離測定が可能なD:S比の高いモデルが必要です。
焦点調整機能 一部の放射温度計には、焦点距離を調整する機能が搭載されています。これにより、測定距離が変わっても精度を保つことができます。
3. 測定温度範囲|用途に応じたモデルの選定
放射温度計は、測定可能な温度範囲が製品ごとに異なります。使用環境や測定対象の
温度に応じて適切な温度範囲を持つ機種を選ぶ必要があります。
低温測定(-50~100℃程度) 食品や冷凍保管、医療分野では、低温範囲での測定が求められます。感度が高いモデルが推奨されます。
中温測定(100~500℃程度) 一般的な工業用途(プラスチック成形、製造ラインの温度監視)に適したモデルが多くあります。
高温測定(500℃以上) 金属加工、溶鉱炉、ガラス製造などの高温環境では、高温対応モデルが必要です。これらのモデルは耐熱性も高く、特殊な波長を利用して正確な測定を行います。
4. 周囲温度|使用環境に応じた設計
放射温度計の性能は、設置場所の周囲温度に影響を受けます。極端な環境で使用する
場合は、以下の点に注意する必要があります。また防爆エリアなど、国内の認定取得
デバイスでないと使用が禁止されているエリアでは、専用対策された特殊モデルを選択
する必要があります。
高温環境での使用 放射温度計本体が高温にさらされる場合、耐熱設計が施されたモデルや冷却機能を備えたモデルを選択する必要があります。
低温や冷凍環境での使用 極寒地や冷蔵庫内で使用する場合、低温対応設計がされた放射温度計が必要です。
過酷な環境 塵や水分が多い環境では、防塵・防水性能(IP規格)を持つモデルが求められます。また、振動の多い環境では耐衝撃性のある機種が適しています。
防爆環境 爆発の危険がある作業場所でも使えるように対策がされた防爆モデルを使用する必要があります。
5. 出力信号|接続機器やデータ利用方法に応じた選定
放射温度計の測定結果をどのように利用するかも選定時の重要なポイントです。以下
のような出力形式に対応した機種を選びましょう。
アナログ出力 4~20mAや0~10Vなどの信号形式で出力され、既存の制御装置や記録装置と接続する場合に適しています。産業用途で多く使用されます。
デジタル出力 USB、RS232、RS485などの通信形式を介してデータを出力します。PCやPLCと連携し、リアルタイムで温度を監視したり、データを記録・分析したりする場合に便利です。
無線通信 BluetoothやWi-Fiを搭載したモデルは、配線が難しい環境やポータブル用途で活躍します。スマートフォンやタブレットでの操作・管理が可能です。
まとめ
放射温度計を選ぶ際は、測定対象や使用環境に応じた仕様を確認し、適切なモデルを
選ぶことが重要です。
選定ポイント | 主な考慮事項 |
測定材料 | 金属、非金属、特殊材質に応じた選定 |
測定距離 | 距離と測定点の大きさ(D:S比)の確認 |
測定温度範囲 | 低温、中温、高温に応じた範囲 |
周囲温度 | 高温、低温、防塵・防水・耐振動の確認 |
出力信号 | アナログ、デジタル、無線通信の仕様選定 |
これらのポイントを押さえて選定することで、用途に合った放射温度計を効果的に活用できます。正しい選定が、精度の高い温度管理や安全性の確保につながるでしょう。目的や環境に応じて慎重に選定し、最大限の効果を発揮する放射温度計を導入しましょう。
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